若手社員お悩み相談所 第16回
私はよく家内とウォーキングをするんですよ。
結局、歳をとってくると歩くのが一番いいという結論に達したからです。
先日も家内とウォーキングをしていてお昼になったので、通りがかりの『とろろ飯屋××』というお店に入ろうとしたのですが…。
知ってます! そこ、この間テレビで紹介してましたよ! すっごい美味しそうなところでしたよね~!
ええ。家内もそう言っていたので、かなり期待度高く暖簾をくぐりました。
お客さんがたくさん入っているな、というのは雑然とした雰囲気から察することができたのですが、お店の人らしき人が一向に出てきません。
仕方ないので、料理を運んでいた鉢巻お兄さんを捕まえて『2人なんですが?』と言ったところ、返ってきた返事が『ギャラリーで待ってもらうことになっています』というもので…。
あらら。何だか変ですねぇ。ずいぶん無愛想な感じがします~。
そうなんです。まず『いらっしゃいませ』の一声がないですからね。
確かに、彼らが「ギャラリー」と呼ぶところで客は待つことになっているのでしょう。
しかし、一見の客には知る由もないことですし、それはお店側の都合ですよね。お店の決め事をさも当然そうに言われると、こちらとしては面白くありません。
それで、小言社長はおとなしく「ギャラリー」とやらで待ったのですか?
待たないですよ。
私、待つの嫌いですから。
あはは、やっぱり! 小言社長、気が短いですもんね~。
むむ…ほっといてください。自分の性格は自分が一番よくわかっています。
ということで、すぐに尻尾を巻いてお店を出て、今度は斜め向かいにあったお蕎麦屋さんに入ったんですよ。これが打って変わって愛想がいいお店でねぇ…。ご主人が満面の笑みで『いらっしゃい!』ですよ。
私はこれが商売の基本だと思います。『わざわざ食べに来てくれてありがとうございます』、この気持ちがお客様に伝わらないとね。
肝心のお蕎麦は美味しかったんですか…?
美味しかったですよ。蕎麦自体が美味しい上に、何よりもう気持ちが違いましたからね。美味しいに決まっているじゃないですか。
食べ物の話が続きますが、某ホテルでやはり昼食を食べたときのことです。12時ちょっとすぎ、12時10分前後ではなかったかと思います。家内と2人で中華ランチを注文したんですよ。ちょっと頼りなさそうなウェイトレスだったのが気がかりでしたが、お昼どきとあって混み合ってきたのでおとなしく待っていました。
そして、待つこと遂に1時。
1時!? 入ったのが12時10分だとしても…遅すぎじゃありませんか!?
ええ。さすがに私も、家内と話すよりその遅さに普通ではない感じを持ちました。だって私よりあとに入ってきた人たちの注文がどんどん出てくるのですよ? それなのに、私たちの前には相変わらず冷めたお茶のみ。
注文した頼りなさそうなお姉さんに『まだ時間がかかりますか?』と聞きましたら、お姉さんは『はい、今確認して参ります』と言って厨房の方に消えました。
しかし今度は厨房からなかなか出てきません。
ははは、聞いているだけでイライラしてきました。
しばらくして、歳の頃40前後の責任者らしき男の人が来て『申し訳ありません、すぐにお持ちしますから』と言いました。私が『あとから入ってきた人の料理が私たちより先に出ているのはおかしいのではないですか?』と聞くと、その方の返事は『厨房が分かれているので、段取りが違うと料理は前後します』というものでした。
しかしそのとき、たった10分前に入店してきた4人組に私たちも頼んだ中華ランチが出てくるではないですか。
『私たちと同じ注文があそこにもう出ているのはおかしいでしょ?』
『同じ料理ならおかしいですね』
『……』
ひっど~い! それって完全に忘れられてたってことじゃないですか! …小言社長怒ったでしょ?
怒りませんよ。
…まぁ、本当は怒りたかったんですけどね。
『僕の中華ランチが出てくるのが遅い』という内容では、何か怒るのが恥ずかしいというか、みっともないじゃないですか。
え~! 信じられないです。私たちがこの手のミスをしたら、烈火のごとく怒るのに~!
そりゃ怒りますよ。私はあなたたちにプロとして給料を払っているのですから。商売のプロとしての不始末にはそりゃ怒るでしょう。
このケースも、厨房への伝達ミスがあったのだと思います。しかし、それならまずは事実を率直に話して詫びるべきではないでしょうか。私たちの注文を受けたウェイトレスが私たちの前に二度と現れなかったことからしても、レストランの注文受け忘れは歴然としています。
お昼どきに1時間近く待たせることがお店の常識というのであれば、もはや文句の言いようもありませんけどね。
レストランの責任者らしき人は謝りもしなかったんですか?
最初は『すぐ持ってきますから』ということで済ませようと思っていた感じでしたね。
私が疑問を唱えてからは『段取りによって料理は遅れる』と主張したかったようです。
なお私が異議を唱えてからは、ただひたすら『申し訳ありませんでした』を繰り返していました。
小言社長は、食事をするところ、お酒を飲むところで気に入らない店には黙って二度と行かないタイプだと聞いていましたが?
はい、そうです。自分に合わないお店には「行かない」選択肢があると思っていますし、お店側は気に入ってくれるお客様にだけ来店してもらえればいいはずですからね。
黙ってそのお店を出なかったのは、この中華レストランが気に入っていたからなのですよ。もう4年来通っているレストランですからね。
それが最近目にするようになった責任者らしき人の、ただ私たちに帰ってもらえれば事は済む、という姿勢が淋しかったですね。『またこのお店に来たいから、少しでも気分よく帰らせて欲しい』という私の気持ちは察してもらえなかったようです。
そうですか…。もう二度と行かないんですか?
今すぐ「行こう」という気分にはなれそうもありません。
ホテルからすれば私たち夫婦が来店しなくなっても、痛くも痒くもないでしょう。
でも、たった2人かもしれませんがそのホテルのファンが減ってしまったことは、商売をやる人間としては大きなダメージと考えたいところです。
レストランの責任者も、穏便に事を収めたかったのでしょうね。すべて丸く収めることが、責任者の仕事であると思っているでしょうから。
しかし、本当のことを話さないのでは心は通わないと思います。私も今回のことは反面教師として勉強になりました。
商売の難しいところですよね。四方八方すべてを上手くやろうとして、実はすべてが中途半端になってしまう。
思い返せば、私もあれもこれもと反省材料が出てきます。
食い物の恨みは恐ろしいですねぇ~。
む…。痛いところをつきますね。
そうです、私は食い意地が張っています。
腹が減っているところに長時間待たされた恨みが私をこれだけ喋らせているのですが、ビジネスの難しさを色々含んだ好例でもあると思って取り上げてみました。
やっと食べられた中華ランチは美味しかったですか?
全然美味しくありませんでした。
今までこのレストランでこんなことなかったですよ。
料理も食べる側の気分でこれだけ味が変わるものかと、今さらながら勉強になりました。
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