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若手社員お悩み相談所 第8回

小言社長物語 1

小言社長物語 1

はぁ、もう私たちも2年目なんだよねぇ…。わかっちゃいるけど中々新入社員気分が抜けないなぁ。どうしても「責任」というものに尻込みしちゃうし…。

新入社員の頃はよかったな~…なんてね。ははは。

何言ってんのよ、責任なんてものはこれからどんどん増えていくのよ? まぁ、責任の重さというものを実感しているだけいいことだけど。

新入社員時代か…。俺らからすれば、もうずいぶん昔のことになっちゃったなぁ。

ところで、小言社長が新入社員の頃はどんな感じだったんですか? 社長職に就く人間の新入社員時代って言ったら、やっぱり自分たちとは違うものなんでしょうね。

え、私ですか?

いやぁ、ここの社長になったのは、私の奥さんのおばあちゃんから継いだからで…。新入社員として就職したときは、こことは別の会社に一平社員として就職しましたよ。

恥ずかしい話、就職に際して何のポリシーも持っていなかった私は親戚のコネを使って当時10大商社と言われた内の9番目、A産業という商社にもぐり込んだのです。

ええ!? コネ~!?「その会社でこんな仕事がしたい!」みたいな熱い思いはなかったんですか?

ははは。いや、何をしたいとか何になりたいとか、そういう気持ちは持っていませんでしたねぇ。

しいて言えば、有名な会社に入ればみんなの手前、面目が立つかなというぐらいの気持ちだけで。

その点今の若者は立派だと思いますよ。このデジセン商事のような規模の会社にも、自分の目的意識を持って入社してくれるのですから。

け、結構ちゃらんぽらんだったんですね…。

そう言われてしまうと何とも…。

まぁ、そういうわけで思いっきりコネを使ってA産業への内定をもらったんですけどね。

なんと就社前にM新聞に「A産業、カナダ石油事業でつまずく」とスクープされてしまいまして…。

うわぁ、それはショック…。

いやいや、さらにショックは続き、A産業の内定者はサブ・メインバンクのK銀行に行ってくれと連絡があったんですよ。

メインバンクのS銀行ならまだしも、サブ・メインバンク、しかも商社に勤めるはずが銀行に就職しろ、ですよ? はいそうですかなんて簡単には頷きません。ほとんど全員がノーと言ったのではないでしょうか。

そのときは新聞記事で「四十七士の討ち死に」なんて、内定者47人と吉良邸討ち入りを掛けてうまいこと言われちゃいましてねぇ。まぁ、これが自分のことを言われているのかと思うと「うまいね!」なんて面白がれるわけもなく、ただただ情けなかったですけども。

え~、メインだろうがサブだろうが銀行に勤められるなら別にいいじゃん、と私は思いますけどねぇ。

その当時は、商社と銀行に就職するのでは待遇や社会的な地位に相当の差があったんですか? それともやっぱり「商社で働きたい!」っていう熱い想いがあったからでしょうか?

いやだってメインバンクとサブ・メインバンクでは預金額、つまり銀行としてのスケールが雲泥の差でしたし、それに私は性格的にどうも銀行という職種に向かなくてねぇ…。

先述した通り、私は結構ちゃらんぽらんに就職していましたので、ただ単純に銀行が向かないという理由で断りました。

ですから、ほかの内定者には「商社で働きたい!」という熱い想いを持った人もいたでしょうね。当時、商社というのは憧れの職種のひとつだったんですよ。「世界に羽ばたく商社マン」なんてフレーズも流行ったくらいですから。

へぇ…、初めて聞くフレーズです。銀行だって堅実で安定していて、人が羨ましがりそうな職場だと思うんですけどねぇ…。それで結局、小護戸社長はどこに入社したんですか?

結局A産業にそのまま入社しましたよ。倒産したわけでもないのに内定取り消しとなると社会的反響が大きいと上が判断したからじゃないですかね。

でもいざ入社してみると、事態は想像よりはるかに悪かったようで、すぐに当時10大商社の3番目か4番目に位置していたI商事との合併話が出ました。

合併と言っても、実態はA産業を解体してI商事に吸収合併させるというのが真相のようでしたけどね。

入社した会社がいきなりなくなるなんて…。小護戸社長ったら社会人1年目でいきなりそんな辛酸を舐めさせられちゃったんですねぇ。

いやぁ全くその通りで、当時はオイルショックも重なり一部上場大企業が軒並み採用ゼロを打ち出した年でもあるんですよ。

腰の据わっていない、ちゃらんぽらんな就職活動の罰があたったのだと思いましたね。

ははは…。でもそんなに社内がバタバタしてたんじゃ、新入社員教育を受けるなんて状況じゃなかったですよね?

ええ。A産業を解体してI商事に吸収合併させることで、この大型倒産案件を処理しようというのがメインバンクの考えですから、当然I商事に継承されない不採算部門のA産業の人間も必要ありません。

当時の私にはわかりませんでしたが、要するにI商事はA産業の商圏は継承しても、そこにいる人間はいらなかったんですよ。

上司や先輩はみんなそれがわかっていたんでしょうねぇ。A産業の人間はみんな自分のことで一杯いっぱい、先もない新入社員教育なんて意味のないことは、誰もしないわけですよ。

うぅ…。話を聞くだけでもギスギスした空気が感じられますね…。劇的すぎて、なんだかドラマみたい…。

そうそう。この顛末は当時テレビドラマにもなったんですよ。出版された本は、確かベストセラーにもなっていましたねぇ。

新入社員だった私は、テレビを見てやっと事の真相を知るぐらいなもので、自身で知ることができたこと・わかったことというのは、とにかく周りの人間や人間関係が荒んでいたことくらいでしょうか。

それはそれは、とてつもない荒み方でしたよ。

リストラされることが半ば決まっての仕事なんて、そりゃあ平静ではいられないでしょうね…。今の自分たちには想像もつきません。

おやおや、昔話が長くなってしまいましたが、来週ももうちょっとお話を続けましょうか。

吸収合併されていく会社の内部の話、デモ行進、業務のストライキ…。

今の若者にとってはにわかには信じられないような話が続くかもしれませんが、今50代60代の人たち、つまりあなた方の上司やお父さんたちの若かりし頃のひとつの昔話と思って聞いてみてください。

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